しさくろく

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ACTH分泌不全症 闘病記(1) ― 日々の変化と、挑戦と恐怖心

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昨日、福岡ローカルの発見らくちゃくで、エーラス・ダンロス症候群の女性のドキュメンタリー完結編があっていて、すごく感動した。

それに触発されてというか、自分自身も難病と闘う一人として、情報発信って大切だなと思ったので、ブログに書くことにした。

病気のことを人に話したりすると、なんだか雰囲気悪くなるし、特別なケアを求めるようであまり好きではなくて、あまり発信してこなかったけれど、この疾患の情報は少ないし、自分にとっても多分一生続くことなので、今後もできるだけウェブに記録をつけていけたらなと思う。

このブログで書くのは最初なので、今回はちょっと丁寧に病気の説明から。

(※ 以下、あくまで自分のケースです。症状も経過も人によって違うので、本当に参考までに。)

ACTH分泌不全症についてざっくりと

自分の持病は、指定難病78 下垂体前葉機能低下症のうちの、ACTH分泌不全症。副腎皮質の機能に必要なACTHというホルモンだけが出ない病気で、結果的に副腎皮質の機能が低下する疾患。何万人に一人とかはよくわかんないけど、案外いるらしい。

難病といっても自分の場合は、コートリルというステロイド(いわゆる皮膚科の薬ではなくて、全く用途の異なる錠剤タイプの内服薬)を毎日服薬さえしていれば普通に生活できる。なので、買い物もできれば仕事もできるので、それほど日常生活に支障はない。

ただ、3ヶ月程度に一度、大学病院に通院は必要で、風邪などの感染症にかかると服薬量を2〜3倍に増量する必要がある。

ちなみに薬を欠かすと急性副腎不全を起こして致命的な状態になる可能性があるので、絶対に薬は欠かせない。なのでステロイドカードの常備も欠かせないし、実家に帰るときとか旅行のときは余分に薬を持っていく。(その代わりというか、コートリルを追加服用したときの即効性はすごい。)

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この病名が判明してもう4年くらいになるけど、自分自身、未だによくわからない病気でもあるし、難病というだけあって原因不明で(人によっては腫瘍が原因の場合もあるけど、自分は多分先天的なものだといわれている)、自分の場合は基本的には治ることはないと主治医からは言われている。

ちなみに自分の場合は、学生時代までは至って普通で(…だと思ってたけど、特徴とか前兆はいろいろあったぽい)、社会人になってから精密検査を受けてこの病気が判明した。

服薬量のコントロールの難しさ

さて、一般的な病気の説明はこれくらいにして、ここからは実際の自分の生活の話。

通院は3ヶ月に一度なので、服薬量のベースは先生と話して決めるけど、体調は日々変化するので基本的には自分自身の裁量。特に感染症にかかるとホント大変なので、冬場は特に気をつけていて、毎日マスクして、帰ったらとにかく手洗いうがい。

「発熱時や手術時は服薬量を2〜3倍に増量」と本とかには書いてあるけど、実際はこれがホント難しくて、どういう時にどういう基準で薬を増やすのかはケースバイケース。

下垂体患者会の会報とかには、発熱時は増やす、親知らず抜くときは増やす、マラソン大会の日は増やす、でも試験の日は増やさなくていい、とかって書いてあるけど(あくまで子供がその疾患の場合の親の判断基準)、実際は自分自身が体得して服薬量を調整する必要があるので、なかなか難しい。自分で判断つかないときは病院に電話で相談する。

なにせ副腎不全は「だるい」が主訴の病気なので、だるい日ってすごくたくさんあるし、眠くてだるかったり、筋肉痛でだるかったり、仕事でだるかったりと、その日のだるさはだいたい主観的。区別がすごく難しい。

自分は特に平熱が低いので、風邪をひいたかがよくわからなくて、仕事に行こうとバスに乗ってから気づくこともあるので、そういうときはホント大変。何回かヒヤッとする体験をしたこともあるし、救急外来に行ったこともあるので、服薬量をミスったときはホント怖い。

普通の日常生活が送れる喜び

大変大変ってつい書いちゃったけど、体調不良はある程度例外的なので、他人と比較さえしなければ、普段は結構平凡だと思う。

この病気が診断されるまでは、だるくて食欲もなくて毎日なにもできなかったし、旅行なんか論外で、買い物にも行けなかったので、その日々に比べると本当に毎日幸せ

もちろん他の人と比べると不便は多いけど、家族や会社の理解も得られてるし、とても幸せな毎日だと思う。

そういう意味では、病気を診断されるというのは悪いことばかりだと普通は思われてるけど、自分みたいにきちんと薬を飲めば普通に生活できるケースもあるし、きちんと診断されれば対処法もあるので、早期診断は良いことだと思う。(ただホントに正確な診断が出るまでは、だいぶ紆余曲折あって大変だった…。それについてはまた別の機会で。)

自分の変化を感じることの難しさ

この病気で一番難しいなぁと思うのは、やっぱり日々自分の身体の状態と感覚が変化していくこと。

さっきも書いたように、「だるい」の感覚も変わるし、季節によって身体ストレスも変われば、仕事量も毎日変化する。

こういう日々変化する状態を感じ取るのはすごく難しいなぁと思っていて、マインドフルネスとかを活用して自分の感覚をコントロールしようとはするけど、やっぱりつい何かと消極的になってしまう。

極端なことをいえば、今はネットショッピングもあるし、Uber Eatsもあるし、家から一歩も出ないで生活もできないこともない。

でも、それじゃ毎日全然面白くないし、少しずつ新しいことに挑戦していきたいと自分は思う。

限界への挑戦と、恐怖心との戦い

毎日日記に、自分がその日にどんなことに挑戦できて、こういうときはしんどかったとか、少しずつメモしてるけど、感覚も環境も日々変わっていくので、なかなか次のシーズンはそのとおりに行かなかったりする。

何かに挑戦するって、結構怖い。この病気になって初めて飛行機に乗ったときはすごく怖かったし、新幹線もバスも未だに慣れないけど、それでもやっぱり挑戦できたときは楽しいし、何より自分自身に勝てた気がして、それが次への糧になる。

とはいえ、やっぱり体調を崩したあとの数日は外出が怖かったりするので、いつも三歩進んでは二歩下がる。悔しいけど。

この病気は多分治ることはないのだから、服薬で体調がコントロールされていることを考えると無理は禁物だと思う。そういう意味でも、あまり恐怖心に打ち勝つことばかり考えずに、恐怖心に "向き合う" ことのほうが重要だと最近は思う。日々のマインドフルネスというか、自分の身体にきちんと毎日向き合えるように、感覚を研ぎ澄ますというか。

まだ自分のなかで、確実な成功体験というか、必ず上手くいく方法なんてものはないけど、いまのところ、毎日の自分の感覚に素直になってさえいれば、なんとなく身体が自然と導いてくれるような気がする。

頭で考えると、つい不安が先立ったり無茶したりしちゃうけど、いろんな意味で身体の感覚を素直に受け止めたほうが、結果的に良かったことの方が多い。

最近の悩み:服薬管理と半錠の管理

最近の悩みは、やっぱり服薬管理。自作の服薬管理システムで管理してはいるけど、やっぱり人間なんでミスも多い。(ちなみに服薬管理システムは、いずれはオープンソースとかで公開したいなと思ってる。今は既存サービスとAPIの組み合わせ。)

あと、コートリル錠自体が10mg錠以外は存在しなくて、それ以下になると、薬局でカットしてもらった半錠になるのが悩み。

自分の場合、記事のサムネにも写っている小さいケースを東急ハンズで買ってきて、財布に入れてる。普通の錠剤と同じように一つ一つ管理したいところだけど、半畳は個包装にするとかさばるし、毎日どの場所で飲むかわからないので仕方なくまとめて入れてる。

半錠の錠剤ってすごく管理が難しくて、大きさも安定しないし(自分でカットするとホントにまちまち)、飲み忘れも増えるし、毎日のことなので辛い。

早く5mg錠が出ないかな…。